無心でお菓子を作った話。
今日、私は会社を休んだ。
昨日も、休んだ。
会社に行きたくない。
人に会いたくない。
外に出たくない。
これは、悪い前触れだと、
私は経験から知っている、
だから、会社を休んだ。
『これは必要な休息だ』
そう分かっていても、
なんだかズル休みのようで、
罪悪感に押しつぶされそうになる。
床に、布団もひかず、直に寝っ転がり、
何をするでもなくぼーっとしていた。
どのくらい経ったかは分からなかったが、
ふと、
『このままじゃいかん』
と思いたち、
近所に買い物に行くことにした。
今日は、日曜日。
道すがら、たくさんの人とすれ違った。
みな、なんだか楽しそうに見えて、
自分が、とっても惨めに感じた。
何とかメモした買い物を済ませ、家に向かう。
その道中、ふと、
『なんで私は生きてるんだろう』
と、思った。
なんで、こんなに苦しいんだろう。
何をそんなに悩んでいるんだろう。
だったらもういっそ…
いかんいかん、とひとり頭を振り、
よぎった考えを振り払う。
悪い考えばかりが、
頭に浮かんでは消えていく。
もうどうしたらいいのか、
分からなくなったとき、
ふと、お菓子を作ろうとしていたことを思い出した。
そうだ、せっかくお菓子の材料を買ったんだ。
とにかく、このお菓子は作ろう。
そして、同居人と食べよう。
その後のことは、その後に考えよう。
そうして私は、お菓子を作るために、
家まで帰った。
家に着くと、外に出た疲れでしばらく動けなかった。
今度は椅子に座り、ぼーっとする。
しばらくして、また悪い考えが浮かびだした頃、
お菓子を作ることを思い出した。
とにかく、なにがなんでも、
このお菓子は作りきるんだ。
別に、大したお菓子じゃない。
初心者でも作れる、簡単レシピだ。
でも、私は立ち上がり、キッチンに向かった。
お菓子を作るのは、単純に楽しかった。
ただ、レシピに書いてあることに忠実に、
何も考えずに手順を進める。
あっという間に、作り終えた。
美味しそうな、甘い匂いが、
部屋中に広がる。
あー、こういうの、なんかいいな
と思った。
こういう日々を、過ごしていたいと思った。
少しだけ、
ほんの少しだけ、前を向けた
そんな、お菓子づくりの時間。